土の良し悪しを見分ける方法

土の良し悪しを見分ける方法

 農業をするには土がなくてはできない。では、土とは何だろうか。実に漠然としている。それを象徴する言葉がある。「土づくり運動」である。土は作って作れるものなのだろうか。何をするのを土作りというのだろうか。これを具体的にしないでなんとなく農業をやっていると農業の成功はない。
 「土とは何か」というテーマで連載をしてきた。その目的は農業をして成功するために、土の内容を明らかにすることである。今回は最終回なので、そのまとめということになる。

 さて、土は作れるものだろうか。結論から言うと土作りはできない。よく考えてみてほしい。土はどれくらいの年月をかけて出来たものなのか。岩石が風化して土になるには何年を必要とするだろうか。気の遠くなるような年月である。その土が簡単に変えられると思いますか。土壌の性質を仕事にしている私が言うのも実に変である。なぜこのような話をするのかと言うと、生産者には土に何かを与えて作物を取ろうとする気持ちが非常に強
い。肥料を与える。消毒をする。葉面散布する。とにかく与えて取ろうとする。その気持ちは痛いほどわかる。私も生産者の一人だからである。しかし、土は簡単に言うことをきいてくれない。

 これは与えて取ろうとする生産者にあてはまるだけの事ではない。何もしなくても自然にして置けば物は取れると考える生産者も同じなのである。

 では、なぜ「土作り」と言われるようになったのだろうか。それは農業が固定資産で、その場所で先祖の土地を守りながら生活していくしかなかったからである。土地を大切にするという意味があったと思われる。

 時代は変わった。農業をして、わずかでも生産物があれば良いという時代は終ったのである。わずかの生産物ではまったく生活できない。土に対する考え方を根本から見直す時期に入ったのである。土づくりという美名のもとに金と時間と手間をかけてはいけない時代になったのである。では、どうすればいいのだろうか。

 「作物が取れる土はどういう土か」ここから出発するのである。土を変えるのではなく
、土を選ぶのである。土は何万年もかけてできたものだから、変えるのもノ何万年もかかる。とても人間の技術では追いつかない。しかも、土を選ぶというのは出来る時代になった。生産者が極端に減少して休耕地がもの凄い面積になったからである。土地は所有するのではなく、借りるというのも一般的なってきた。そうすると農業で成功するには、まず第‐に土の良し暮しを見分けることができる選択眼が必要ということになる。生産者はこの事にまったく慣れていない。まだまだ昔の習慣にとらわれている。早く方向転換をして欲しい。外国との競争も激しくなるし、株式会社の農業生産も活発になると思う。このままでは負け犬なにる事は目に見えている。

 土の良し悪しを見分けるには、やはり学習をする必要がある。勉強もしないで山勘が頼りでは失敗してしまう。今がチャンスなのである。農地を手放す人、又は貸し出す人は急増すると思う。そうしないと食料の自給率から見てもどうにもならない所まできている。土の良し悪しがわかっているだけでも、どれだけ有利に動く事ができるだろうか。

 土は物理性・化学性・生物性から成立している。これを細分化すれば際限がない。どこまでも細かくなる。これをやっているのが大学の先生である。細かくなりすぎて現実的な農業にはまったく使えない。その事にしか詳しくないという状況になる。こんな知識はまったく必要としない。

 土の良し暮しを判断するには、スコップ1丁と根っこの気持ちになってみると判断がつくのである。どういうことなのか説明しよう。畑にスコップで穴を掘ってみる。5cm〜10cmでは何の意味もない。1mぐらい掘ってみるのである。そうすると土の断面が1mほど出てくる。この断面を見れば、土の性質が一目でわかる。何万年もの土の活動が瞬間にして見えるのである。粘土層、礫層、火山灰土層、見れば一目でわかる。なんと便利なことか。さらに掘り進めていく感触からも物理性がわかる。硬いかやわらかいのか。水分はどれくらい含んでいるのか。見たままをスケッチして感じたことをメモにとる。これだけでも土の良し悪しは相当判断できる。

 さらに根っこの気持ちになってみる。もし自分が根だったら、ここにいて気持ちがいいかどうかである。オカルト的な事を言っているのではない。しつかり根が張れる状態になっている土かどうか判断するのである。どういう土の状態なら根が張れるのか。農業をやっている人なら誰でもわかるでしょう。それもわからないとしたら農業には向かない。職業替えをした方がいい。根が気持ちよく張れる土は排水がよく、酸素を適度に含む事ができる状態の土である。

 もちろん見ただけではわからない部分がある。化学性である。EC、CEC、PH、などである。これは分析するしかない。分析しても数値を読む力がなくてはいけない。なぜこの数字が出てくるかである。ECもCECも高ければ良いというものではない。なぜ高いのか低いのかである。背景を読む力を養う必要がある。

 土壌学というと難しいように思われるかもしれない。難しくは少しもない。その土で作物を作ったらどうなるのか、それだけである。この単純で横本的な事を多くの生産者は忘れている。そして小手先の効く肥料に気持ちが動く。これは本末転倒である。

 土さえ良ければ、何を生産しても良い結果が得られるのである。根本の大事を大切にしてほしいと思う。

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