放線菌は畑の抗生物質

放線菌は畑の抗生物質

 前回はVA菌根について話をした。植物の根毛周辺に生息して、手足となって働く。周囲7cm〜8cmも広がり、行動半径も広い。畑の土に含まている栄養分を、根に供給してくれるのである。こんな便利な働き者がいるだろうか。人間が休んでいる間にも、労をいとわずに黙々と働いてくれる。この働き者を人間は無視する。リン酸を畑の土から集めてくれるというのに、リン酸をたくさん入れてしまう。VA菌根は働き場を失う。職場を失ったVA菌根は、たちどころに消えてしまう。あ〜あ、あんな働き者を放り出してしまうなんて、人間は何を考えているのかわからん。植物はきっとそう嘆いているに違いない。

 さて今回は放線菌である。これが、VA菌根に勝るとも劣らない働きがある。なんと、「土壌病害」を抑制する働きがある。放線菌というとわかりづらいけれども、抗生物質というと多くの人が知っている。人間の抗生物質のほとんどはこの放線菌から作り出される。土壌改良につかわれる、ヤスガマイシンなども放線菌である。

 放線菌が多く生息している土壌は、病害にやられにくい。逆に少ない土壌は、病害にやられる可能性が高い。では、どういう畑に放線菌は多く生息しているのだろうか。チッソと酸素のバランスがとれているほ場、肥料濃度の低いほ場に、放線菌は多く生息している。つまり、自然環境に近いほ場という事になる。
 
 逆に放線菌の少ない土壌というのは、どんなほ場だろうか。肥料濃度の高いほ場である。漠然と肥料濃度、肥料濃度と言われてもわかりづらいだろう。例えば、農協で指導する標準施肥はどうか。放線菌から言えば、とても住みづらい環境になる。肥料濃度が高い。農協の施肥は、収量を目安に設計されている。施肥の8割は捨てる計算なのである。2割しか必要はない。物が取れるという事だけを考えて、畑の条件、容量を無視しているのである。放線菌のいる環境を整備したいと思うなら、標準施肥の1/5位が丁度いい。そんなに少なくてもいいのかと思うでしょう。表を見てほしい。いかに肥料を入れすぎているかである。

  樹園のリン酸は4倍にもなっている。野菜も同じである。いかに放線菌が住みづらい環境になっているか理解できるでしょうか。微生物の世界は学問的に確立された世界ではない。これからも難しいと思う。しかし、もっとも大切にしなくてはいけない事なのである。理由は明解である。自然のカで土壌病害を抑える事ができるからである。生産コストは大幅に減る。質のいい物が取れる。連作できる。すべて微生物がやってくれるのである。

  肥料を入れすぎているという事は大切なリズムと躍動感を壊しているという事になるのである。

 放線菌の事をよくわかってもらう為に野山の話をしよう。野山にある樹木は肥料をやらなくても見事に育つ。どうしてだろうか。それはCN比、炭素とチッ素の比率で表現される。秋になると葉が落ちる。落ちた葉には水分と炭素が多く含まれる。これが光合成で分解していく。分解していくと、炭素はチッソ分に変化してゆく。変化したチッソ分を植物が吸収するという循環ができている。CN比が10前後で推移していくと、もっと微生物が活動しやすい状態という事になる。

 自然というのは実によくできていて、暑い夏に一番活発に活動できるようにできている。CN比が理想に近い状態で長時間維持できるのである。CN比が理想に近い状態にあるという事は放線菌が活発に働いているということになる。目には見えないけれど、調査してみると、そうなっているのである。放線菌が働きだすと樹木に近づく。病害を見事にやっつけてしまう。その結果、野山に自生している樹木は美しく、元気がいいのである。

  自然環境が農業の手本であると、よく言われる。それはその通りなのであるが、手本にしている人はあまりにも少ない。なぜだろうか。自然の仕組みを知らないからである。微生物の働きもその一つである。

  生産者として重要な事は病害が出てくる仕組みを知る事である。そして病害が消滅する仕組みを知る事である。放線菌がどういう役割をするのか、これだけを知っていれば大きな武器になる。

 放線菌のしめくくりとして、他にはない情報をお伝えしましょう。玄米アミノ酸でぼかしを作る。そうすると、表面に白い粉のようなものが吹き出てくる。これが放線菌の一種である。放線菌を増やすのは、実に簡単なのである。玄米アミノ酸のボカシを肥料として迫肥に使えばいいのである。しかも低コストで短時間にできる。これ以上に簡単な方法があるだろうか。玄米アミノ酸で栽培すると連作に問題がでないというのも、ここに放線菌が働くからである。

  放線菌、微生物といっても、少しもむずかしくないのである。身近なことで応用できる。生産者はそのことに注目し、活用すれば大きな利益が得られる事に気が付くことだろうと思うのである。





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