農家が「農業経営」に成功しないのには理由がある。
「田中義剛」という人を知っていると思う。コメンテーターとしてテレビによく出てくる。北海道なまりの人なつこい語り口で話す人である。元はシンガーソングライター。
この方は酪農経営、年商60億円という農業経営の成功者なのである。始めから成功したわけではない。最初は地産地消で野菜を作って売ったり乗馬クラブのようなことをやっていた。まったく結果が出ない。赤字どころか自己破産寸前まで追い込まれてしまった。八方ふさがりである。
起死回生の秘策はもっと付加価値の高い加工品へと経営のカジを切った。
そこで作り出したのが「生キャラメル」である。北海道のお土産ナンバー1にまでなってしまった。この生キャラメルはすべて手作りである。生クリームとグラニュー糖、バニラビーンズとハチミツで作る単純なもの。これを銅の鍋を使って練りあげて作る。包装まで手作業である。その結果人口4000人の町で1500人が働いているという状況になった。町の人の大半が田中さんの工場で働いているといってもいいような状態になってしまったのである。
これを裏返すと、作るのは単純だけどすべて手作業だから誰もマネができないのである。「なんで、そんなに売れているの…」口の中に入れるとスーッととろける食感がたまらない。プレゼントをしたら跳び上がって喜んでもらえる。一度買った人はやみつきになり次も買ってしまう。人気が人気を呼んでの大当りになった。
田中さんのヒットはこれだけではない。十勝豚丼チェーンを200店舗も展開している。十勝地区では豚丼が名物料理になっている。この豚はただの豚ではない。牛の乳を原料にチーズを作るとホエーという粕ができる。これは捨てられるものである。これを豚の餌に与えた。ホエー豚である。肉質がやわらかく甘味があって色のいい最上質の豚肉ができたのである。豚は1000頭も飼っている。もちろん牛も飼っている。チーズなどの乳製品も作っている。これで酪農事業家として大成功をした。畑もなければ牛も豚もいない0からスタートしてわずか10年ほどのことである。
「それはテレビに出ている田中さんだから出来たんでしょう。私達とは人種が違うよ。」もっとよく話を聞いてほしい。田中さんは特別なことをやったわけではない。やったことは二つのことだけである。?自分の持っている強みを徹底的に活用した。?利益を得るために生産、加工、販売を一貫して実行し高い付加価値を実現した。
みなさんはどうなのか。自分の強みに気がついていない方が大半であろう。生産者でも加工、販売をしている人は数多くいる。大福やそば、餅、漬物などを作って直販所で売っている。その商品をよく見てほしい。家庭の延長である。家族が食べるものである。お金を出して買ってもらうということがどういうことか、まったくわかっていない。
それでも食べればおいしい。私も時々買ってきて食べる。でもすぐに忘れてしまう。思い出して探してみるとすでに製造中止になっている。
これは何を意味するのか。農産物の原材料を作るのはプロでも加工のプロではない。販売のプロでもない。プロでないのならプロに学ぶことをしないとプロにはなれないのである。家庭の料理の延長では誰も買わない。ヒット商品にもならないし、話題になることもないし固定客がつくこともない。
これにも理由がある。物作りは技術力だから技術の拙いものが評価された例はまったくないのである。農家が農業経営に成功しない大きな理由がここにある。といってもピンとこないかもしれない。
加工も販売も0から学習する必要があることをまず知ってほしいのである。成功をした田中さんはその事に気がついて0から学習したのである。
その学習は生産する時も大変に役に立つ。例えば田中さんを例にとってみよう。牛から出る乳をそのまま生乳としてでなく加工をする。そこから生キャラメルのヒントが生まれた。チーズを作る時に出る廃棄物を豚の餌にしてブランド豚を作った。それを生肉で売るのではなく十勝豚丼にして外食産業を始めた。生産も効率が良くなり、価値も高まり利益もドンドン大きくなる。
農業生産者はこのように有利な立場に全員が居るのである。誰にでもチャンスはある。もちろんリスクもある。成功するとは限らない。だから学習をするのである。学習で使うのは頭と教材だけだからお金はかからない。成功例をモデリングして学習すれば早い。楽しい。失敗せずに成功できる。チャレンジしない人が変なのである。
先祖から農地をもらっている生産者は食と住だけは何の心配もない。それならまず加工と販売の学習をしてみてはどうだろうか。農業が何倍も楽しくなり夢も大きく膨らむ。儲からないのではなく儲けないのである。お金は天から降ってくるわけでもなく他人が恵んでくれるものでもない。自分で稼ぎ出すものである。それはむずかしいことではない。しかし、他人をあてにしていては未来永劫に儲かることはない。
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メールありがとうございます
生徒さんがぼかしの作り方や使い方を覚えたら、
すばらしい技術になりますね。楽しみです。